カテゴリ:故郷の想いで・・( 3 )

煙突のけむり・・






当時、わたしは、
炭住街から2キロ離れたところにあった、
向かい合わせで並ぶ、八軒長屋に住んでいた。

近所は窓を開けっ放しで、
プライバシーもなく、
いつも、隣近所を気にしながら、
兄弟ケンカをした記憶がある。

たった二間の部屋に、
家族6人が寝るとなれば、
布団を均等に折り重ねばならず、
朝起きると順番が入れ替わっていたことで、
またケンカをした。



f0339711_20543572.jpg























玄関脇の物置には、
正月用のにわとりが飼われていて、
餌係りだったわたしは、
育てた、そのにわとりを食べることができず、
正月料理を台無しにしてしまった。

にわとりがいなくなった物置は、
やがて、炭坑から支給された焚き物に使う、
坑木の置場に変わった。

父が炭鉱の巻き上げに勤めていたせいで、
その物置の下は、いつの間にか
支給された豆炭でいっぱいになっていた。
そして、わたしは焚きもの割りを任された。



f0339711_22115840.jpg






小学生の細い腕ながら、
長斧で、その坑木をかまどに使えるように、
程よい大きさに割る要領を父から教わった。

割った焚き木が跳ね、
玄関のガラスを破ることもあったが、
大半は、すでに割れていて紙テープで
補修してあったので、
さほど気にすることもなく笑ってすまされた。

どこの家にも、まだ水道がなく、
50メートル離れた井戸までバケツをさげ、
カメオケが満タンになるまで何度も往復した。

雨の日は、玄関前の通りは、
ぬかるみ状態になり、靴が汚れると、
田舎から通ってみたいに言われたこともある。


f0339711_20343230.jpg





















表通りに出ると、
バスの車掌さん(女性)が、
踏切で一旦停車したバスから飛び降り、
小走りして、その左右の安全を確認してから、
手招きで運転手に合図している。

この様子を、
乗客は窓から顔をだして、
車掌さんが穿いた紺色のタイトスカートの
尻を眺め、カタチがいいとか、
可愛いなどとひやかしたのである。

今はセクハラになるわけだが、
そんな、和やかな時代でもあった・・
今、時代の変わりが早く、
それに振り回されているようでもある。

石炭産業がさかんだった時代の、
わたしは、あの赤レンガの高い煙突から
吐き出される煙の流れで、
その日の風を知っていた・・。




よろしければ応援のクリックをおねがい!
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
[PR]
by yoshikohpress | 2014-05-08 20:38 | 故郷の想いで・・ | Comments(0)

トントン橋・・






ちょっと、トントン橋の池に行ってくるね!
と言って、いつも出掛けた・・。

トントン橋って、みんなは言っていたけど、
たしか、正式な名称はなかったみたいな気がする・・
でも、そういえば誰にでもわかった。

小学生の5年くらいだったと思う・・
当時、伊田は新町という所に住んでいて、
その橋の先にある池に、
魚釣りの名目で頻繁に出かけた。

もちろん、当時は今みたいな
ゲームソフトなど、何もなく、
もっぱら山遊びや魚釣りが定番だった。

目的の、その池まで自転車で行っても、
30分はかかっただろうか・・
その日は、あいにく家の自転車が空いてなくて、
橋の先の池まで、1時間もかけて歩いて行った。

住宅街と畑を通り抜け、
しばらく歩くと、左手が糒の町と聞かされていたが、
どんな町か知らず、行くこともなかった。


f0339711_1843645.jpg











彦山川に掛った、その橋がトントン橋で、
丸太が敷き詰められ、上から泥を被せただけの、
手すりも欄干もない粗末な橋だった。

そして、橋のところどころが朽ち果て、
穴があいて、そこから川の流れを目にすると、
高いところがダメなわたしは恐怖を覚えた。

橋を渡りきると、向かいの土手下に
目的のその池があった。
炭鉱の坑道が陥没したせいで、
できた池らしく、この池には名前がなかった。

池のふちには大きな蓮の葉が並んで、
夏の暑い日差しの下、たとえ魚が釣れなくても、
わたしにとって格好の遊び場だった。

蓮の隙間を狙って釣り糸を投げ込むが、
手作りのウキに、いっこうに反応がない・・
ウキをずっ~と見てるうちに、
いつしか・・眠りに落ちてしまった。

気がつくと・・土手のうえから、
仲良しだった、ひとつ歳下のチィーちゃんが
大声で呼んでいた・・


f0339711_18401514.jpg







「オバちゃんが、うちのカズを呼んできてって~!
新聞配達が遅れろうが!
そお、カズちゃんに言って~だって!
カズちゃん、うちの自転車をこいで…
うちを後ろにのせて帰りぃ!…」

わかった!ちょっと、
待つといて!メダカとって帰るけん!
メダカをすくって、ビンに浮き草と一緒に入れて
チィーちゃんに持たせた。

「カズちゃん、これどこに入れるん?・・」
うん、うちの水槽に決まっているくさ・・
「…ああ~!また怒られるよ
あした死んどるけん、すぐわかるやん…」

よかやん!父ちゃんは、
オレには、何んにも話しをせんけん…
これくらい…怒られてもよかちゃん!

「ふ~ん・・カズちゃん、数に入ってなかったとげなね?
オバちゃん、そげなこと言いよるとよ?」
f0339711_23155361.jpg
























うん、知ってるよ!いつも言われようけん…
「ふ~ん!カズちゃん、オトコやん!」
チィーちゃん、そげんことがわかると…?
「ううん、おとなのことわからん!」

ほらっ、このメダカのビンを持つとって!
あっ、チィーちゃんの自転車乗りにくかぁ~
「じゃ、やっぱり!うちが乗る
だけん、カズちゃんは走って帰りぃ!」
ダメくさぁ~!しっかり、つかまっときぃ!

ああっ、冷たいやん!
背中に水がかかりょうがぁ~!
「カズちゃんがゆっくり、こいでよぉ~!」

ああ、わかった!
もう、濡れてもいい!…フタがないちゃけん!

「カズちゃん・・・うち、尻が痛いけん…
ゆっくりこいで・・」







よろしければ応援のクリックをおねがい!ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
[PR]
by yoshikohpress | 2014-05-05 18:10 | 故郷の想いで・・ | Comments(0)

昔の炭鉱の風呂・・







そう、わたしが小学生の頃まで、
毎晩通ったかな?
それも我が家から、たぶん2キロ先くらいの
炭住街の一角にあった。

当時は、高度成長期の前とあって、
この界隈の家庭では、
風呂のないのは、ごく当り前で、
2キロの距離も、さほど苦にはならなかった。

50人くらい一気に入れそうな、
大きな円形の湯船の中央に、
蒸気のパイプがあったのは覚えている。
もちろん、石炭が燃料だとは、
炭住街に住む子なら誰でも知っていた。

背中に大きな入れ墨をいれた
おじさん達に混ざって、
風呂に浮かんだ、湯垢を掻き分けるようにして、
わたしも、ここで泳ぎを覚えた。

だが、この浴場で事件は頻繁に起こった。
15畳ほどのコンクリートの脱衣所には、
だしか4段重ねの木箱に
脱いだ服を入れるだけで、
鍵など当然あるはずもなかった。


f0339711_179533.jpg





















脱ぐときから、目星をつけられていたのか・・
靴は盗られ、下駄を履いていくと、
それさえも盗まれる・・。
そんなことが、度々あって、
姉から、何でボロを履いていかないのよ!
と、よく叱られたものだった。

その時代は、裸足で外遊びくらい
平気だったこともあって、
履物がなければ、裸足で帰ればいいこと。

しかし、これが、服をごっそり、
下着ごと盗まれては、どうしょうもない。
もちろん、風呂場に電話があるわけでもなし、
家に電話がある家庭も、
そんなになかった・・。

それに、これしきのことで、
警察が来るわけでもなく・・
何十人と、湯船に浸かっている中から、
知り合いの叔父さんを捜した・・。

「叔父さん、俺、服、盗られたから、
叔父さんが帰る時、
ついでに、家に寄って話してくれないかな?・・」

f0339711_145375.jpg













1時間ほど、待っても家から来ない・・
それで、ふだん洗わない指先や、
足の指の間まで、念入りに擦って
服の来るのを待った・・。

番台の小母ちゃんが入ってきて、
わたしの名前を呼ぶ・・
6つ上の姉が代わりの服を持って
番台のところ待っていた・・。

「あんた、なんしょうと!
盗られたら、他のヒトの服を
着て帰らなくくさぁ・・」と不機嫌な顔でいう。

あっ、これ・・姉ちゃんの服やん?
「ぜいたく、いわん!
じゃ、タオル1枚で帰れば?・・」
いや、いい・・
でも、おれ、恥ずかしい・・
だけん、一緒に帰ろうよ・・。





すっかり故郷の言葉を
忘れてしまい、話し言葉がこんなだったかな?
なんて、ちょっとしたためてみました・・。



よろしければ応援のクリックをおねがい!

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
[PR]
by yoshikohpress | 2014-05-02 18:25 | 故郷の想いで・・ | Comments(0)

Woodbluesのアーティストが綴る、癒しのブログです。
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31